2017年1月10日火曜日

思い出の価



依頼されていた、ある道具の修理。
長い長い時間がかかってしまいましたが、ようやく修理を終え、ご依頼主の元へお返しすることができました。

それは、ある意味どこにでもあるような、ありふれた品。
いまどき、壊れたからと言って、殆どの人は直そうとも思わずに、次々に買い替えていくような道具。
でも、その人にとっては、かけがえのない、たったひとつ、大切な形見の品。

あちこちに修理のお願いに行き、どこでも断られ、藁にもすがる思いで、ここへやってきてくださった。
そういう方を、そういう品を、そういう思いを目の前にしたら、もう自分には断るすべがないように思います。

お引き受けしたとき、お渡ししたとき、その方はずっと涙を流されていました。
その品の本当の価値は、その人だけが知っている。

「私にとって、アンティークの価値は、オークションでどれだけの値がつくか、ということではなく、そのものにまつわる思い出の価で決まります。」
自分がこの道を志そうと決めた、大げさに言えば人生を変えた、堀口すみれ子さんの言葉。

いつかそんな仕事が出来るようにとやってましたが、もしかしたら、本当にその人にとって価値あるものに関わる仕事ができたのかもしれないと、それだけで満たされたように感じます。



このエントリーをはてなブックマークに追加 Check

0 コメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...