2016年1月26日火曜日

時々の初心


新年会で、大学の同期たちと語らっていた時のこと。
友人が私の手を見て、「凄いゴツくなったね!」と。

節々がゴツゴツ出っ張って、太い指。
真っ直ぐには伸びずに、曲がったままの間接。
固く盛り上がった皮膚を、ハサミでジョキジョキ切ったり。

大学の頃は、随分細くて華奢な手だったはずだけど…。
知らず知らずのうちに、だいぶ職人の手になってきたようです。
あの頃の自分たちはどうだったか、思い出話もはずみました。

「時々の初心、忘るべからず」とは、世阿弥の言葉。
学生の頃の初心。就職した時の初心。
この道を歩み始めた時の初心。独立した頃の初心。

初心というと、始めた頃の気持ちや志という
意味合いで使われることが多いですが、
もともと世阿弥は、始めたばかりの未熟な状態、
という意味で書いていたのが、興味深いです。

初心を忘れれば、初心に逆戻りする。
さらなる向上を目指すとき、今もひとつの初心にすぎないと。

自分のそれぞれの時期の初心を忘れず、
時と経験を重ね、なしえること、生み出せること。
先日亡くなった名優、アラン・リックマンさんも、
歳をとってからやっとシェイクスピア劇のいい役がやれるようになる、
とおっしゃっていたそうです。

今、自分の初心は何か。
その先に、積みあげ築くものは何か。
今もまた、ここから始まる未来への初心。


[メールメガジンRyuze+ 2016.1.23 号に掲載のコラムより]


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2016年1月24日日曜日

日々。



日々生まれては、日々失われるもの。
日々見つめては、日々探し求めるもの。
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2016年1月19日火曜日

Heroes



David Bowieの突然の訃報。
自分にとっても今年一番の驚き、そしてショックでした。

David Bowieの曲を初めて聴いたのは、中学生の時。
当時は、レコード会社の移籍後の版権問題で、
過去のアルバムが公式には発売されておらず、
中古レコードショップを探し回ったのが、
思えば自分の本格的な洋楽デビューだったのかもしれません。

一作ごとに劇的にスタイルを変え、
英雄的な宇宙飛行士やきらびやかなスーパースターを
生み出しては自らの手で葬り去り、
新たな実験や更なる挑戦を重ねていく。

あくなき好奇心と探求心に満ち溢れ、
常に変化しつづけながらも、そこにはいつも、
彼ならではの美学や哲学があり、死生観があり、
自由を追い求める心や、 解放があった。
それは最後の最後まで、David Bowieの生きざまとして
貫かれていたように感じます。

変わり続けること。そして挑戦し続けること。
変わらぬ大切なもののために。
それを一番学んだのは、彼の生きざまからだったかもしれません。

出逢いが、人をかたちづくる。
やっぱり、自分にとっての、一番のヒーローだったなぁ。

贈り物を遺して、羽ばたき、飛び立っていったかのような余韻。
誰もが各々に、各々の道をゆくためのような残響。

ありがとう、そして、おやすみなさい。


(※メールマガジンRyuze+ 2016.1.16号に掲載のコラムより)

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2016年1月12日火曜日

行き着き納まる場所



鉄打つ鍛冶屋が、私の仕事。
なのに、実は昨年の秋から、鎚を振るう腕を痛めてしまっていました。

職業柄つきものの、気長にお付き合いな痛みではあるのですが、
身体を痛めてしまうということは、やっぱりどこかに無理がある。

ワークショップの際に、体験者の皆さんに、必ず説明することがあります。
「鉄は熱すると柔らかくなり、さまざまに形を変えていきますが、
 いくら叩いても、体積が変わるわけではありません。
 叩くということは、素材の特性に従い、鉄の行きたい方へと誘導していくこと。
 無理やり叩いても、決してきれいな形には納まりません。」

作ることも、できあがる品も、
無理なく自然に流れるように、
行き着き納まる姿や形、場所がある。

自分の体もそう。
まだまだその域にも達していない、ということを
痛みとともに噛み締めつ。

そんなわけで、今年の漢字一文字は、「然」。
流れるように自然であり、
しかし流されることなく毅然として、
行き着く先は必然でもあるように。

泰然自若。
鉄も、自身も。
あるべき姿の探求は、これからも続きます。


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2016年1月3日日曜日

境界を見定める

謹んで新春のお慶びを申し上げます

旧年中は格別のご厚情を賜り 厚く御礼申し上げます
末永くご愛用頂けるより良き品をつくっていけるよう
なお一層励んでまいります
本年もどうぞ宜しくお願い致します



大晦日や新年には、お寺や神社にお詣りに行き、
おみくじをひく、というのが、自分の定番コース。

元日と開業記念日の年に2回は、
毎年おみくじを引いていますが、
実はここのところ、続けて「凶」ばかり。
それで何かが左右される訳ではありませんが、
凶、と言われると、やはり身が引き締まるもの。

自分にとってお詣りをすること、何かに祈ることは、
自分の力ではどうにもならない領域があることを
改めて感じ、畏敬の念と感謝を込めて、
自らなすべきことを見定めること。


「できること」と「できないこと」。
その境界は、今、どこにあるのか。
時を区切り、時を納め、改めて始まりとする今の時に、
心静かに見つめ直すことで、これからの
「やること」、「やらないこと」にも
繋がっていくこととも思います。

年明けと共に引いたおみくじは、
久しぶりの大吉。
引き締めた身を跳躍させる時がきたのなら、
吹く風にも感謝を。



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