2012年4月14日土曜日

時を刻む。暮らしを描く。


「鉄って、錆びたりするんじゃないの?」

お客様から、よく聞かれる質問です。

正直に言いましょう。

そうですね、錆びますね、鉄は。


もちろん、様々な仕上げを施し、「錆びにくく」してあります。
でも、だからといって、絶対に錆びない、というわけではありません。


鉄は、錆びる。
鉄という素材が、生活や工業、産業の中で、ありとあらゆる場所で当たり前のように使われながら、でも何となく、素材として少し距離感をもたれてしまうことがあるのには、ひとつはそんな理由からかもしれません。

鉄は、錆びる。
でも僕は、そのことがまた、鉄という素材の、大きな魅力でもあるように感じます。


僕はよく、自然に錆びた鋼材を再生して利用することがあります。 
まっ茶色に錆び付いた鋼材から錆を落とすと、自然に腐食して出来た凹凸の表情が浮かび上ってきます。
そこにはまさに、長い年月を経てきた味わいがあります。

錆びていくことは、人が歳を重ねていくことと、同じような味わい深さがあるように感じます。
歳を重ねることで刻まれていくもの。それは決して、マイナスなイメージではなく、重ねた歳月と経験の分だけ、なおいっそう魅力と輝きを増し、より人生を深くしてくれるようなものだと思うのです。


長い時間を経過して、自然にできた表情。
炎に熱され、ハンマーで叩いて成形した跡。

出来上がるまでに過ごしてきた時間が、そのまま刻まれているような道具。
そこにこれから刻まれるのは、使う人と共に過ごしていく、使う人の時間。

大切な時間や思い出も、共に刻まれていくような、そんな品が作れたら、と、いつも願ってしまいます。


忘れ去られて、ほったらかしになっているような道具ほど、錆びていたりします。
いつも身近にあり、よく使う道具ほど、意外なほど錆びにくかったりします。


もし、お願いできるとするならば、どうか少し、身近においてやって下さい。
毎日とは言わずとも、時折気にかけてやってください。
そして出来れば、飾りのままにはしてしまわずに、使ってやってください。
ほんの少しくたびれて錆びてしまったら、錆を落とし、時々メンテナンスをしてやってください。

ただそれだけのことで、ずっとずっと、長く長く、鉄は在り続けます。

あなたの代から、子供へ、もしかしたら、孫へ。
もしかしたら、代々使っていくことが出来るくらい、鉄は歳月を重ねてくれます。共に過ごした歳月を、その身に刻みながら。


僕はそんな道具を作りたいと思っています。

例えば、絵筆や彫刻刀のような。
使う方々が、その道具を使って、それぞれの時を刻み、それぞれの暮らしを描いていくような、そんな道具を。

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